不動産を使った相続税対策に国税庁がメス——見直しが迫られる節税スキームの現状
不動産を活用した相続税対策は、長年にわたって資産家・地主の間で広く使われてきた手法です。
しかし近年、国税庁がこうした節税スキームに対して規制を強化しており、従来の手法が通用しなくなるケースが増えています。
本記事では、不動産相続税対策の仕組みと問題点、国税庁の規制強化の動向、そして今後の相続対策の考え方について解説します。
この記事でわかること
- 不動産相続税対策の主な手法と仕組み
- 国税庁が規制強化している背景と具体的な動向
- タワーマンション節税の評価方法見直しの影響
- 合法的な節税と租税回避の境界線
- 今後の相続対策で押さえるべきポイント
結論:不動産節税の「常識」が変わりつつある
不動産を使った相続税対策は、今も有効な手段の一つです。
ただし、2023年以降の制度改正や裁判所判決によって、従来の「常識」が通用しない場面が増えています。
特に以下の点は早急な見直しが必要です。
- タワーマンション節税:2024年1月から評価方法が大幅に変更された
- 賃貸建設による節税:空室リスクと収益性を無視した計画は本末転倒になりうる
- 行き過ぎた節税スキーム:国税庁の否認規定の適用が強化されている
「これまでやってきた方法だから大丈夫」という前提での計画は、今後大きなリスクを伴う可能性があります。
不動産相続税対策の主な手法
まず、これまで広く使われてきた不動産相続税対策の手法を整理します。
① 賃貸アパート・マンションの建設
更地に賃貸住宅を建設することで、相続税評価額を下げる手法です。
具体的には以下の評価減が適用されます。
- 貸家建付地評価減:自用地評価額から最大21%減(借地権割合・借家権割合による)
- 小規模宅地等の特例:貸付事業用宅地として最大50%減(200㎡まで)
- 建物の評価減:固定資産税評価額をもとに計算されるため、実勢価格より低い
ただし、建設後に空室が続くと収益性が悪化し、むしろ財務状況が悪化するケースもあります。「節税のために建てた」という動機だけでは、長期的な資産形成につながらない可能性があります。
② タワーマンション高層階の購入
タワーマンションの高層階は、眺望などのプレミアムがついて実勢価格が高くなる一方、相続税評価額は低層階とほぼ同額に設定されていました。この「実勢価格と評価額の乖離」を利用した節税手法が広まりました。
しかし、2024年1月から評価方法が大幅に見直されました。高層階ほど評価額が高くなる方向に改正され、従来のような大きな節税効果は見込めなくなっています(後述)。
③ 不動産管理法人の設立
個人が所有する不動産の管理業務を法人に委託・移転することで、所得を分散する手法です。
- 個人の不動産所得を法人に移すことで累進課税を回避
- 家族を役員・従業員として給与を支払うことで所得分散
- 法人の退職金・保険を活用した資産形成
有効な手法ではありますが、法人設立・運営にはコストがかかります。また、形式だけの法人(いわゆる「ペーパーカンパニー」)と判断された場合、税務上の否認リスクがあります。
不動産を活用した相続税対策は、個人の資産状況・家族構成・収益性によって適切な手法が異なります。現状の対策が今後も有効かどうか、セカンドオピニオン相談でご確認いただけます。全額返金保証付きです。
国税庁が規制を強化している背景
国税庁がこうした節税スキームに規制を強化している理由は、主に以下の2点です。
① 実勢価格と評価額の乖離が大きすぎる
相続税法では、財産の評価は「時価」を基準とすることが原則です(相続税法22条)。しかし、不動産の評価には路線価や固定資産税評価額を使う簡便な方法が認められており、実勢価格との乖離が生じます。
この乖離を意図的に拡大する形での節税は、「租税回避」として否認される可能性があります。
② 「税負担の公平性」に反するという判断
最高裁判所は2022年4月、相続税の評価額と時価が著しく乖離している場合に、国税庁が独自の評価で課税できると判断しました。これにより、形式的に評価通達の要件を満たしていても、「実態として租税回避と判断される」場合は否認されうる法的根拠が確立されました。
タワーマンション節税:2024年1月からの評価見直し
2024年1月1日以降、「マンション評価の適正化」として、タワーマンションを含む分譲マンションの相続税評価方法が見直されました(国税庁・2023年通達改正)。
変更のポイント
- 従来:1棟全体の固定資産税評価額を持分で按分(低層・高層ほぼ同額)
- 改正後:「市場価格理論値」と「従来の評価額」を比較し、乖離率が高いほど評価額を引き上げる補正が適用される
具体的には、「相続税評価額 ÷ 市場価格」の比率(乖離率)が一定基準(0.6)を下回る場合、市場価格の60%を評価額の下限とする補正が適用されます。
実務上の影響
- 高層階・築年数が浅い・都心立地のマンションほど評価額が上がる傾向
- 従来の評価額より1.5〜3倍程度に評価が上昇するケースも
- 2024年1月1日以降の相続・贈与に適用(遡及なし)
すでにタワーマンションを相続税対策として取得している場合も、今後の相続では新ルールが適用されます。評価額の変化を確認する必要があります。
賃貸建設節税の注意点
賃貸アパート・マンションの建設による節税は、今後も活用できる手法ですが、以下の点に注意が必要です。
空室リスクの増大
国内の人口減少・世帯数減少が進む中、賃貸住宅の需要は地域によって大きく異なります。特に地方都市や郊外では空室率が上昇しており、「建てれば入居者がつく」という前提での計画は危険です。
節税効果が得られる「貸家建付地」の評価減は、実際に賃貸として使用されていることが条件です。空室が続くと評価減の適用が難しくなるケースもあります。
小規模宅地等の特例の適用条件の厳格化
相続税の大きな優遇策である「小規模宅地等の特例(貸付事業用)」は、相続開始前3年以内に新たに賃貸を開始した土地には適用されないルールがあります(2018年改正)。
節税目的で急いで賃貸建設をしても、このルールにより特例が使えないケースがあります。
借入金リスク
賃貸建設の多くは金融機関からの融資を伴います。空室リスクや建築コスト上昇により、返済が困難になるケースも報告されています。相続税の負担を減らす目的で行った建設が、かえって相続財産(債務)を増やす結果になる可能性もあります。
合法的な節税と租税回避の境界線
専門家の間で広まっている見解は、「合法的な節税と租税回避の境界線が、より厳しく問われる時代になった」というものです。
否認されやすいケースの特徴
- 相続直前(1〜2年以内)に多額の不動産購入や借入を行っている
- 実勢価格と評価額の乖離が著しく大きい
- 節税以外の経済合理性(収益性・事業目的)が乏しい
- 税理士に指示されるまま実態のない法人を設立している
認められやすい節税の特徴
- 収益性や事業継続性を考慮した合理的な不動産投資・管理
- 長期的な視点での資産形成・相続対策の一環として行われている
- 家族間での取引が適正な対価で行われている
- 専門家(税理士・不動産鑑定士)による適正な評価に基づいている
「今やっている節税対策が今後も有効か確認したい」「税理士から勧められた方法が本当に最適かセカンドオピニオンを聞きたい」という方は、お気軽にご相談ください。税金・社会保険・金融の4つの視点から客観的に整理します。
今後の相続対策で押さえるべきポイント
不動産を活用した相続対策が規制される中、今後の方向性として以下の点を意識することが重要です。
① 収益性と節税効果の両立を前提にする
相続税対策として取得した不動産が、長期にわたって安定した収益を生み出せる計画になっているか確認してください。節税効果だけを優先した計画は、収益性が伴わない場合、相続後の資産価値を損なうリスクがあります。
② 既存の対策を定期的に見直す
税制は毎年改正されます。2024年のマンション評価見直し、2025年の事業承継税制の見直しなど、制度変更の影響を定期的に確認することが重要です。数年前に作成した相続対策プランが、現在の税制下でも有効かどうかを再確認してください。
③ 「時価」と「評価額」の乖離に注意する
国税庁・裁判所ともに、実勢価格と評価額の乖離が著しい節税については否認の方向にあります。評価額が低いことだけを根拠にした対策は、将来的に修正申告・追徴課税を求められるリスクがあります。
④ 複数の専門家の意見を聞く
相続対策は、税務・不動産・法務・金融など複数の専門領域が絡み合います。1人の専門家の意見だけに頼らず、セカンドオピニオンを活用することで、見落としや偏りを防ぐことができます。
よくある質問(FAQ)
Q1. タワーマンションをすでに相続税対策として購入しています。2024年改正の影響を受けますか?
2024年1月1日以降に発生した相続・贈与から新ルールが適用されます。すでに所有しているマンションでも、今後の相続時には新評価方法が適用されます。どの程度評価額が上がるかは、物件の所在地・階数・築年数によって異なりますので、不動産鑑定士や税理士に個別に確認することをお勧めします。
Q2. 賃貸アパートを建設すれば、やはり相続税は下がりますか?
適切な立地・収益計画のもとで行えば、今も節税効果は見込めます。ただし、2018年改正により相続開始前3年以内に開始した賃貸には小規模宅地の特例が適用されない点、空室リスクと借入返済リスクの点は必ず考慮する必要があります。節税効果だけでなく、収益性と資産全体の設計を専門家と確認してください。
Q3. 不動産管理法人を設立しましたが、問題ありますか?
適正な対価での管理委託・実態のある業務運営が行われていれば、問題ありません。ただし、管理業務の実態がなく形式だけの法人と判断された場合、節税効果が否認されるリスクがあります。法人の設立目的・業務内容・役員報酬の妥当性について定期的に確認してください。
Q4. 国税庁に「租税回避」と判断されたらどうなりますか?
申告した評価額が否認され、国税庁が算出した評価額で再計算されます。その差額に対して相続税・加算税・延滞税が課される場合があります。最悪の場合、重加算税(35〜40%)の対象になることもあります。不服がある場合は審査請求・訴訟も可能ですが、費用と時間がかかります。
Q5. セカンドオピニオンを活用するメリットはありますか?
現在の相続対策プランに第三者の視点で問題点や見落としを確認できます。特に「顧問税理士に任せているが本当にこれでよいのか」という不安がある場合、客観的な確認の場として有効です。当研究所では全額返金保証付きのセカンドオピニオン相談を提供しています。
Q6. 相続が近づいてからでも対策できますか?
相続対策は早いほど選択肢が広がります。相続開始直前の対策は「租税回避」と判断されるリスクが高く、また金融機関の融資審査も厳しくなっています。相続が予想される5〜10年前から計画的に準備することが理想的です。まずは現状の資産状況の整理から始めてみてください。
まとめ
不動産を使った相続税対策は、今後も活用できる有効な手法の一つです。しかし、国税庁の規制強化・裁判所の判断・制度改正によって、従来の「常識」が変わりつつあります。
特に以下の点については、今すぐ見直しを検討してください。
- タワーマンション節税:2024年1月からの評価見直しの影響を確認する
- 賃貸建設:収益性・空室リスク・借入返済を総合的に評価する
- 法人化:形式だけでなく実態のある運営ができているか確認する
- 既存の対策:現在の税制下でも有効かどうか定期的に見直す
「合法的な節税と租税回避の境界線」は、専門家でも判断が難しいケースがあります。複数の専門家の意見を聞きながら、長期的な視点での相続対策を設計することが重要です。
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不動産相続の対策が今後も有効かどうか、税務・金融の4つの視点から客観的に整理します。
「顧問税理士の提案が本当に最適か確認したい」「今の対策を見直したい」という方は、ぜひご相談ください。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。税務・社会保険・法務上の取り扱いは、個人・法人の状況や最新の法改正により異なります。具体的な判断・手続きについては、税理士・社会保険労務士・弁護士等の専門家にご相談ください。
参考:国税庁「居住用の区分所有財産の評価について」(2023年通達改正)、最高裁判所2022年4月判決、エスレポート第3909号(2026年2月16日号)
この記事の執筆・監修:株式会社 金融財務研究所
税金・社会保険・助成金・金融の4つの視点で、中小企業・医療法人・個人事業主の財務改善をサポートしています。

